Sing a song for today

明日を憂う前に、今日を生きる。今日を唄う。

【♪】BUMP OF CHICKEN 8th Album【RAY】:(未来の)あなたを乗せた飛行機が(いまの)私の行きたい場所まで

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時代に迎合しない言葉が時代に即した音に乗って届けば、それは不思議と「いま」を歌った唄。変わってしまったと嘆くのは早計、彼らの唄は「普遍が不変である」ことを証明してくれている。新しいメロディーで変わらない想いを歌うから、いつまでも信頼していられる。

いつだって藤原基央というひとは、心の柔らかく脆いところを丁寧に掬いあげて言葉にしてくれる。掬われる度に救われた気分になる。震災発生以降「いま」の脆さを嫌という程感じてしまった私たちだけど、バンプはいつだってその大切さを教えてくれていたのだと改めて思った。今回はさらに、私たちは“残酷な程自由”であり、歩む「いま」は自ら選んだものであると強く示されている印象を受けた。(ともすれば動けるのに)動けない自分の弱さを意識させ、自分と向き合えているか、言い訳していないか問いかけられているように感じる。

藤くんは自分自身を客観的に(≒他人として)見つめている。その距離感が、リスナーにとっては、ちょっと離れたところから見ていてくれるように感じられる。それがバンプらしさのひとつなんだろうなと思う。それにしても、彼はずっと「鏡の中の人(=自分)」と対話しているのだろうか。音楽性が開けたわりに歌詞が「篭って」いる気がするのは、まあいつもそうだと言われればそうなんだけど。笑


以下、曲ごとの感想。

01. WILL
「そうきたか!」と笑ってしまった、ライブが始まるときの高揚感を思い出させる曲。歌詞カードとも合わせて、あのワクワクした気持ちにいつでも戻れるのが嬉しい。

02. 虹を待つ人
“どこまでもずっと自由”
待望のCD音源化。映画の主題歌だったのに配信限定にしたのは、音の面からかなと勝手に思ってる。ライブではコーラスを楽しめて、会場に一体感が生まれる曲。

03. ray
とにかくポップ! バンプの曲なのが信じられないレベル。サビで声重ねすぎて既に初音ミク感あるから、コラボでもおかしくないなとは思う(藤くんが充分歌えるのにボカロの初音ミクが歌う必要性はあまり感じないけど)。アルバム名と同じ曲名なのはバンプ史上初だけど、
“生きるのは最高だ”
“この光の始まりには君がいる”
っていう真っ直ぐな言葉に強い想いが表れてる気がした。
武道館で初披露されたときは外で聴いてたなぁ、寒空の下で約3時間もよく耐えた…笑

04. サザンクロス
南十字星」。
“離れても側にいる 気でいるよ”
ちょっと離れたところから見ていてくれるような、バンプのスタンスを感じる曲。歌詞から【セントエルモの火】を思い出した。

05. ラストワン
この曲の音すきだな、はやくライブで聴きたい。コーラスのwow wow歌いたい。笑。構成が【モーターサイクル】に似てる印象。
“変われるのは一度だけ”
下手に希望を持たせず、優しさでもってリアルを突きつけるところがバンプらしい曲。自分を受け入れられるように、動けるように、優しく鼓舞してくれる。

06. morning glow
サビに入るときのリズムに藤くんらしさが出てる。辿り着けなかった未来っていつまでも持ち続けてしまうけど、それは既に過去になっていて、手放してしまうことでまた自由に未来を描くことができるというのは凄く救いになる。さよならと出会って、出会いと別れないっていう言い回しが好き。何回別れたって出会うことはできるんだね。
“臆病な私に必要だったのは 小さな勇気じゃなくて 本当の恐怖”
曖昧に誤魔化さず、真摯に見つめる視点にはいつも舌を巻いてしまう。

07. ゼロ
シングルとして聴いたときは、私はゲームってやらないので、作品の世界観に合ってるんだろうなと思っただけだった。ライブで他の曲に挟まれて良さがじわじわ分かった曲。
“終わりまであなたといたい それ以外確かな思いが無い”
リスナーに向けて歌ってくれたのかと思っていたけど、あなた=私自身なのかもしれない。この曲に一人称は出てこない。
“そこで炎になるのだろう 続く者の灯火に 七色の灯火に”
ここから次の曲への流れが秀逸。

08. トーチ
「たいまつ」。若手バンドのような音にバンプらしい歌詞。ここ最近の自分のテーマ、“なくした事をなくさないように” というのを歌ってくれていて驚いた。“どれだけ離れてもここに(トーチが)ある” んだね。最後の
“動かなきゃきっと君に会えない 会いたい 会いたい”
バンプのスタンスとしては意外な感じがして、なんとなく嬉しくなった。

09. Smile
震災がきっかけの曲だけど、いつもこういうことを歌ってきたひとたちだから変に特別な感じがしなくて、だからこそ言葉に重みがある。アルバムの中に入るとよりそう思わされる。鏡の中にはもうひとりの自分が居る。「ひとりでも、ひとりじゃない」ことを強く感じる曲。

10. firefly
“色々と難しくて 続ける事以外で 生きている事 確かめられない”
Smileの後に収録されるとまた違った意味が込もってくる。
“おいてけぼりの空っぽを主役にしたまま 次のページへ”
ここに改めてハッとさせられる。全体的に、一生懸命「いま」を生きている事実を認めてもらえてる気になる曲。

11. white note
アコギで始まるのが尚更、藤くんの心境っぽくて切ない。
“色々書いたノート 真っ黒で真っ白”
こういうリアルを見つめた描写が本当に上手い。言えなくても考えてるって事、このひとたちなら分かってくれるんだろうな。
“ラララ これ以外 僕にない”
“ラララ それ以外 特にない”
そんな藤くんが、バンプが好き。

12. 友達の唄
最近キスマイの【光のシグナル】を聴いていたから、改めて聴くと、これがバンプなりのドラえもんへのアプローチだったんだと面白く感じる。卒業を控えてみて尚更ぐっとくる曲。
“信じたままで 会えないままで どんどん僕は大人になる
それでも君と 笑っているよ ずっと友達でしょう”
中途半端な終わり方にも感じていたけど、改めて聴くとアウトロの余韻が沁みる。

13. (please) forgive
鹿野淳さんが何年も前から絶賛しているのは覚えていた。最初はそこまで訴えかけてこなかったけど、歌詞を見ながら聴いたら最後の最後で涙が堪えきれず。過去に赦しを乞うと同時にいまを赦し、未来を見ている歌。このいまを選んだのも、未来を選んでいけるのも自分なんだ。あなた=未来、私=いま。
“(未来の)あなたを乗せた飛行機が
(いまの)私の行きたい場所まで”
…辿り着けるように、いまをちゃんと生きたいと思わされた。
Bメロとサビの境界が、歌詞とメロディーで異なっているのも「読みたくなる」曲。
曲数の関係で前のアルバムから持ち越されたそうだけど、この曲のおかげで次の曲の深みが増してる。

14. グッドラック
シングル曲がアルバムの中で輝きを増す良い例。(please) forgiveの流れを受けて、君を自分として捉えた聴き方もできる。この曲が最後に置かれることで、“いつもひとりじゃなかった” と本気で思わせてくれる。過去の自分をも含めて、さよならしたひとたちの幸せを心から想える曲。“君の生きる明日が好き” 
と言えることはなんて尊いのだろう。

(15. 隠し
本編に気合を入れたせいか、今回は若干手抜き感が…じわじわ笑えるけど。歌詞ないのね。書き初めとかの言葉? ある意味コンセプチュアルなアルバムだからかなぁ、始まる時間も、そういう意味だろうし)


総括:少年少女だけではなく、大人になっても充分に救われ得る曲が詰まったアルバム。何年経っても彼らには救われる感覚があって、いつも新しい曲の何処かしらに気づかされるし、昔の曲がふと支えになってくれることもある。時代が変わってもひとの心の根本的なところは変わらなくて、だからこそ彼らの曲が長年多くのひとに響き続けるのだと思う。普遍は不変。
そしてAR三兄弟さんとのコラボアプリ「BOC-AR」を使えばさらに面白くなる作品。これ、付録じゃなくてひとつのコンテンツとして楽しめる。ベスト盤以上にゲーム感が増してて、ワクワクできる。
初回盤にはMVやライブ映像も付いてくるので、なかなか美味しいのでは。個人的にQVCをリプレイできるのは嬉しい限り。